東寺 塔頭 別格本山 観智院
東寺塔頭で別格本山でもある観智院は、東寺の北大門と北総門の間の細い櫛笥小路(くしげこうじ)沿い、北大門の近くの東側にあります。京都駅の新幹線ホーム側(八条口)から出て東西に走る八条通りを15分程西に歩くと、東寺の北総門に辿り着きます。
※北総門
北総門から石畳の道沿いに南(北大門)に向かい歩く途中、東側(左側)に観智院があります。
※北大門(別の日の写真です)
観智院では平成26年から改修工事が行われていましたが、平成28年の春、ようやく拝観が再開されました。
観智院は真言宗全体の観学院と言われ、膨大な文書・典籍・聖教類が所蔵され、多くの学僧がここで学んだと言われています。
観智院の特別公開前に、このテレビ番組を見て、しっかり知識を入れてからの拝観となりました。また、今回の東寺の観智院の春の特別公開では、解説する方が各所に配置されていて、しっかりとした話を聞くことが出来ました。
※観智院の建物内は現在撮影不可、お庭は撮影可となっています。通常は庭に降りることは出来ません(公開再開前の限定公開の時に、庭から屋根を眺める機会があったようです)。
改修のポイントは屋根
庫裏にあたると思われる場所から入り、客殿、四方正面の庭を挟み、東側に本殿と続きます。
今回の改修工事のポイントは、屋根です。
※客殿の屋根、杮葺きの部分。
昭和2年の改修工事で客殿の屋根に防災の観点から使われた銅板葺きの屋根が、桧皮葺き(ひわだぶき)と杮(こけら)葺きの屋根に変更されました。元々は杮葺きだったそうなので、建立時に近づけるための工事だった様です。ちなみに、杮(コケラ)の字。柿(カキ)の字とはちょっと違うので、ご注意を。
上手く撮れませんでしたが、現地で見ると、2種類の屋根の違いがしっかりわかります。
観智院 客殿
観智院の客殿は、慶長時代に再建されたものですが、桃山時代の典型的な書院造りの建造物として国宝とされています。
客殿の上の間の壁には、宮本武蔵筆と言われている鷲の図がそのままの状態で残されています。有名な人の絵は美術館や博物館、宝物館などで温度や湿度を管理した元で保存されることが多いのですが、観智院の宮本武蔵の鷲の図は、自然のままがいいという東寺の偉い方の判断で、そのままの襖の状態で維持されています。そのため少し色が褪せてきていますが、なかなかの迫力です。
何故お寺の襖に宮本武蔵?と思いましたが、吉岡一門と決闘した宮本武蔵は報復から逃れるために3年間観智院に身を潜めていて、鷲の図はその時に描かれたものだ、という説明でした。
※客殿 次の間の濡れ縁と櫛笥小路沿いの壁の間の庭
今回の改修で、熊本のい草を使い岡山で手編みで編まれたという、今では貴重な純国産の畳みを使用したと説明されていました。意識して違いを感じてみると、少し柔らかい感じがしました。高さは当時のままを維持しているのでしょう。現在の住宅や建物よりも天井が低く、それがまた古さを感じさせてくれます。
観智院 五大虚空蔵菩薩様と愛染明王様
五大虚空蔵菩薩様
客殿と四方正面の庭を挟み、本堂へ。本堂には虚空蔵菩薩様がいらっしゃいます。東寺の観智院の虚空蔵菩薩様は『五大』です。虚空蔵菩薩様が五体、です。
本堂に入ってまず驚くのが、五大虚空蔵菩薩様の大きさです。部屋の横幅いっぱいに並んでいます。
仏像というとどうしてもきらびやかなイメージが拭えませんが、観智院の本堂と五大虚空蔵菩薩様は白地の壁に木の濃い茶色、そして黒い五大虚空蔵菩薩様と、至ってシンプルです。そのシンプルさが五大虚空蔵菩薩様を引き立てていました。
京都・東寺観智院安置の五大虚空蔵菩薩像(重文)は、空海の孫弟子にあたる恵運が唐から招来した像である。法界、金剛、宝光、蓮華、業用の各像はそれぞれ馬、獅子、象、金翅鳥(こんじちょう)、孔雀の上の蓮華座に乗っている。この観智院像は、元は山科(京都市山科区)の安祥寺にあったものである。
出典:wikipedia-虚空蔵菩薩-五大虚空蔵菩薩
安祥寺は通常非公開寺院なのですが、2019年の春に特別公開されました。
虚空蔵菩薩様と言えば、虚空蔵求聞持行(こくうぞうぐもんじぎょう)。一定の作法に則り100日間かけて100万回の真言を唱えることで、あらゆる経典を記憶し、理解して忘れる事がなくなるという、弘法大師も行ったという行が有名です。
京都市民にとって、虚空蔵菩薩様と言えば十三詣りというお詣りで行く嵐山の虚空蔵 法輪寺を思い浮かべる人の方が多いですが、この春、東寺の観智院でも五大虚空蔵菩薩様の十三詣りの受付をしていました。
十三詣りあるいは十三参り(じゅうさんまいり)は旧暦の3月13日前後 (新暦の3月13日から5月13日)に、男女とも数え年13歳でおこなう祝いである。子供の多福・開運を祈り、小学校を卒業して中学校に入学する春に寺社に詣でる形式が一般的。
特に京都嵯峨の虚空蔵法輪寺における虚空蔵菩薩への「十三参り」は有名である。虚空蔵菩薩は十三番目に誕生した智恵と福徳を司る菩薩とされる。これに因み別名、知恵詣りまたは智恵もらいとも云う
出典:wikipedia-十三詣り
私が生まれ育った地域では十三詣りの風習がなく、京都に来て初めて知りました。京都にはそんな風習も多いです。
愛染明王様
愛染明王様は煩悩即菩提の本尊様。五大虚空蔵菩薩様の隣の部屋に鎮座されています。
梵名に赤い色という意味を持つ愛染明王ですが、観智院の愛染明王様は護摩焚きによりその姿のほとんどが黒く変わっています。
ですが、端々に赤が残るその姿は、大きく、こんなに近くで拝見したことない、というのが正直な感想でした。
愛欲などの煩悩もそのまま認める、煩悩を離れてその先に悟りはないという、その愛染明王様の教えは、凡人の私にはありがたいようなまだまだ難しいような、難しい限りです。
愛染明王様がいらっしゃる部屋の前の濡れ縁辺りからお庭を見たら、新しい感じの六地蔵さんとお稲荷さんがいらっしゃいました。
観智院で頂けるお菓子はこのお店のお菓子
観智院の本堂北の茶室楓泉観で出されている『月輪』。
このお菓子を作っているのは、北総門の八条通りを挟んだ斜め前(八条通りの北側)、日の出老舗さんです。日の出老舗さんでは月輪を購入することは出来ませんが、同じ材料を使った常用饅頭は購入出来ます。
※日の出老舗さんの和菓子。お懐紙との季節感のずれはご了承を。
観智院のお菓子がおいしくて…夏に買い求めた所、すすきの焼き印と黄色がきれいな「すすき」をオススメして頂きました。しっとり優しい甘さ、ごちそうさまでした。
お持ち帰りのみですが、日持ちするお菓子ではありませんので、ご注意ください。
観智院で売られているお香
観智院に入って最初に驚いたのが、お土産コーナーから始まるところ。東寺関連のお土産品の対角の壁一面に、松栄堂のお香コーナーがありました。
松栄堂と言えば、香木、塗香(ずこう)からインセンスまで扱っている、烏丸二条に本店のある、京都の老舗のお香やさん。京都生まれのご夫人に「ご不幸やったら松栄堂さんのお香を一緒に届けといたら間違いないわぁ」と言われたことがある程です。
その分、そこそこ良いお値段です。
最近ではJR 京都駅 新幹線ホーム下の京都駅 薫々や嵐山に嵐山香郷という匂い袋制作体験の出来るお店を出したりと、古いだけではないお店としても注目されています。
そんな松栄堂のお香、私が愛用しているのは『時雨月』と『東寺香』。時雨月は各ショップで、東寺香は東寺敷地内の食堂(じきどう)や御影堂(みえいどう)で扱われています。この東寺香、白檀の香りの強いお香で、講堂のお香の匂いに近いと思います。東寺の食堂や御影堂では、もう一種類、風信香(500円)という松栄堂さんのお香も扱われています。
※時雨月(徳用)と東寺香
時雨月は小さいサイズで70㎜20本入り 864円(税込み)、ご自宅用の大容量で120本4,320円(税込み)。
東寺香は本数はわかりませんが、一般的なお香の長さ(13㎝強)で2000円(税込み)。あまりこだわりがなくて記念に自分用に買うのなら、東寺香が私のオススメです。
観智院の御朱印
観智院の御朱印は、東寺の食堂(じきどう)で拝受します。東寺の御朱印の中には愛染明王様のものもありますが、観智院の文字が入った御本尊の虚空蔵菩薩様のものを。
観智院 概要
名称 | 別格本山 観智院 | 山号 | – |
御本尊 | 五大虚空蔵菩薩 | 脇侍/安置仏 | 愛染明王 他 |
観智院拝観時間 | 9:00~17:00(拝観受付16:30まで) | 観智院拝観料 | 500円 (時期により金堂講堂や宝物館とのセット券などもあります。) |
名称 | 東寺 (通称:教王護国寺) |
山号 | 八幡山 |
正式名称 | 金光明四天王教王護国寺秘密伝法院(こんこうみょうしてんのうきょうおうごこくじひみつでんぽういん) 正式名別称:弥勒八幡山総持普賢院 |
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御本尊 | 薬師如来像 | 脇侍/安置仏 | 日光菩薩/月光菩薩 その他敷地内に多数 |
開基 | 桓武天皇 | 宗派 | 真言宗 |
住所 | 京都府京都市南区九条町1 | ||
最寄りの公共交通機関 | 近鉄東寺駅から徒歩約8〜15分 京都市営バス 東寺東門・東寺南門・九条大宮・東寺西門前 |
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拝観時間等 | 05:00〜16:30、17:00、18:00 (季節によって変わります。夜間拝観も、一度閉門退出後、再入場になります) |
拝観料(通常) | 拝観料:庭園内(金堂講堂含む)500円 ※拝観内容により変動あり・無料で見られる場所もあり |
ちなみに、観智院の正面にある学校は、中学で偏差値74という超難関校です…。
おまけ。
東寺の中で一番親しみを感じている、北総門横のお不動様。立像であることが私の中でのポイント。
このお不動様はいつもお花がいっぱい飾られています。
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