西院春日神社 概要
名称 | 西院春日神社 (さいいんかすがじんじゃ) |
創建 | 天長十年(833年)二月二十八日 |
主祭神 | 建御賀豆智命・伊波比主命・天児屋根命・比売神 | ||
境内社/摂社・末社 | 春日若宮社 西院還来神社(さいいんもどろきじんじゃ) 西院宮 弁財天社 稲荷社 住吉社 金刀比羅宮 大元宮 天満宮 猿田彦社 | ||
主なご利益 | 病気平癒災難厄除 旅行の安全 その他 | ||
所在地 | 京都府京都市右京区西院春日町61 | ||
最寄りの公共交通機関 | 阪急電鉄 西院駅→4分 京福電気鉄道 嵐山本線 西院駅→7分 京都市営バス 西大路四条→3分〜6分 |
・春日造りの本殿。
・お百度石がある(お百度まいりの方法も解説されている)。
京都の街中にある、春日造の綺麗な神社
京都の大通りである四条通りと西大路通りが交差する、西院。西院は大通りが交差しているがゆえの交通量の多さと阪急で大阪にすぐに行けるというアクセスの良さ、京都外国語大学や外大に併設している高校の学生さんも加わり、常に人が多く賑やかな場所の一つです。そんな西院駅から北西に進んだところに、西院春日神社があります。
なんとなく「西院に行かなきゃ」と思い始めてから数週間後の心地よく晴れた日、思い立ったが吉日とばかりに参拝してまいりました。
佐井通沿いから参拝スタート。
西院春日神社は佐井通と佐井西通の両方から入ることが出来ますが、今回は四条通と佐井通が交差する交差点を北上し、佐井通側の鳥居から参拝しました。
鳥居の手前に白梅が、今が盛りと咲いていました。その隣には鹿が彫られた灯篭と、由緒書き。歩道からノンビリ眺め…たいところでしたが、佐井通は交通量は交通量が多い通り。西院春日神社辺りの歩道は一段高くなっているため車の往来に危険を感じることはありませんが、他の歩行者の方の邪魔にならぬよう、早々に境内へ。
この日は雲がほとんどない、見事な快晴でした。高さと日光の関係で、「吽」担当の狛犬さんが、どうしても上手に撮影出来ず…今回は「阿」担当の狛犬さんだけ近くから撮らせていただきました。少し高い位置から、西院春日神社を守っていらっしゃいます。
西院春日神社 境内散策。
社務所前の手水舎。手水舎の横には、一願蛙と書かれた蛙が。「三蛙は見かえるにつながる縁起の良い蛙」と書かれていました。真正面から見た時、3匹には見えなかったのですが、横に回るとしっかりと3匹。水をかけて一願…との説明通りに水を…と思いましたが、蛙の手前に溜まっている水をかけるのか、手水舎から汲んで来てかけるのかわからりませんでした。
水垢離をしてくれる蛙さんなのでしょう、今回は願いごとはせず、手だけ合わせておきました。
西院春日神社はその名の通り、春日大社から勧請された神様が祀られています。驚いたのは、神様を勧請された日がわかっているという点。年だけではなく日付までわかっているのは、珍しいのではないでしょうか?
天長十年(西暦833年)二月二十八日、淳和天皇が仁明天皇に位をお譲りになり、淳和院(西院)にお移 りになったとき、勅諚により奈良の春日四座大神を勧請し、守護神とされたのに始まります。
出典:西院春日神社 公式サイト-春日神社 由緒・信仰
西院春日神社の拝殿(?)は神域? 清浄を感じる空間。
西院春日神社の境内の真ん中には、大きな拝殿らしき建物がドーンと建っていました。この建物を拝殿と捉えて良いのかどうか?今回、現地で周りを何周も回りながら、非常に悩みました。
私が過去に見て来た拝殿(だと思う建物)は、真ん中に柱がある形式ではなかったため。一般の私が入ることができる、できないの違いはあれど、正面から神様に拝することができる形式だったのです。ですが、西院春日神社の拝殿(らしき建物)は、真ん中の柱があるために、神職の方でも正面から神様を拝することが出来ない造りになっています。また、拝殿(らしき建物)の地面は白い細かな砂利に綺麗な砂紋が付けられていました。そして、社殿前の真ん中の柱の周りだけ、円が描かれて居ました。
立ち入りが出来ない拝殿は珍しくないですが、地面に書かれた模様と言い真ん中の柱と言い、かつて見たことがない形式。注連縄と紙垂(しで)、地面の模様により、清浄を感じずに居られない場所でした。
見事な春日造の社殿。
春日造の本殿に祀られている神様は、1柱1舎という言い方がふさわしいかどうかはわかりませんが、1つの建物に1柱(1神様)が4つ横並びに並んでいて、1社に合祀されていることがありません。そのため、春日造の社殿を見るたびに、それぞれの家のようだ!という印象を受けます。
横に長い社殿、横並びの本殿と朱色、ランタン(?)がかけられた感じ、奈良の春日大社の雰囲気をそのまま持って来たかったんだろうなぁ、という印象を受けました。
それにしても、春日造の神社にお参りすると、収まりが悪いというか途切れてしまうというか…。毎回スマホの限界を感じずにはいられません。
※西側の春日若宮社の前から。
※東側から。奥の灯篭のところが春日若宮社。
中門の唐破風の欄間は、見事な彩色が施されていました。蟇股の下、御旗、神社幕だけではなく社務所の瓦など、あらゆるところに社紋が施されて居たのも、印象的。静かな西院春日神社の雰囲気とは対照的に、色とりどりで非常に豪華、植物の模様の蟇股です。
中を伺うと、雄(角有り「吽担当」)と雌(角なし「阿担当」)の鹿が座っていました。狛鹿さんだぁ…!と思いながらのお詣りとなりました。
そんな豪華な中門の奥、本殿に祀られているのは、
・建御賀豆智命(たけみかづちのみこと)様
・伊波比主命(いわひぬしのみこと)様
・天児屋根命(あめのこやねのみこと)様
・比売神(ひめがみ)様
の4柱。春日大社の神様と同じです。
総称して春日神と呼ばれ、藤原氏の氏神である。
武甕槌命 – 藤原氏守護神(常陸国鹿島の神)
経津主命 – 同上(下総国香取の神)
天児屋根命 – 藤原氏の祖神(河内国平岡の神)
比売神 – 天児屋根命の妻(同上)出典:wikipedia-春日大社
経津主神(ふつぬしのかみ)様は伊波比主神(いわいぬしのかみ)様の別名。また、武甕槌命様も使われている漢字は異なりますが、建御賀豆智命(たけみかづちのみこと)と同じ読み方の同じ神様です。
西院春日神社の「疱瘡(ほうそう)石」は病気平癒の御神徳。
さて。国の繁栄・安泰と国民の幸せを願って祀られた奈良の春日大社の神様方が、西院春日神社では特に病気平癒の御神徳がある、とされています(勿論、繁栄・安泰、厄除け等の御神徳もあります)。
同じ神様でも複数のご利益があることは珍しくありませんが、同じ神様方なのに何故ここまで御神徳が大きく変わったのだろう?と思っていたところ、社殿前に「病気平癒の霊石 疱瘡石(ほうそういし)について」という紙が置かれていました。
平安時代、淳和天皇皇女・崇子内親王が、当時は不治の病として恐れられていた「疱瘡」(現在の天然痘)をお患いになられたおり、春日神社にご快復をご祈願されたところ、春日大神様は内親王の身代わりとして、御神前にあった石に疱瘡をお移しになり、内親王がご快復されたと伝えられ、以来「疱瘡石」と呼ばれ、病気平癒・災難厄除のご利益があり、歴代天皇・皇族方も大変御信仰されてまいりました。
出典:西院春日神社公式サイト-霊石「疱瘡石」公開のご案内–
今の時代と違い医療が未発達な頃、健康であるということを維持するのは、私たちが想像するよりも難しかったことでしょう。病気平癒・災難厄除の霊石の御神徳が特に有名になるのは、極て自然な流れだったに違いありません。
この疱瘡石、毎月、一日、十一日、十五日に本殿の前の中門で見ることができるので、病気平癒の御神徳を願われる方は、是非その日に伺ってください。
お百度を踏みたい人、必見です。
社殿と拝殿の間に、二つの石がありました。その片側、社殿側の石は木で囲まれ、お百度石との札が建てられていました。願掛けのお百度というのは、時代劇のドラマなどで見たのか記憶が定かではありませんが、なんとなく知っていました。でも身近に「お百度を踏んだことがあるよー」という人が居なかったため、なんとなくでしか有りませんでした。
西院春日神社の中門には「お百度のしおり」というお百度の方法が書かれた紙が置かれていました。申し出ずに頂ける場所に置かれているのは、こっそりとお百度参りが出来る、ありがたい配慮。いつの日かお百度を踏みたい程の願いができた時は、西院春日神社に伺い、お百度のしおりを片手に、西院春日神社での正しい方法でお百度を踏もうと思います。
西院春日神社 境内社へお詣り。
境内の西側に、境内社が並んで居ます。南東を向いて建っている弁財天社と稲荷社。寺社は東向きや南向きで建てられることが多い印象ですが、こちらの弁財天社と稲荷社は、何故か南東を向いて建てられています。西院春日神社の中でもこの2社だけが違う向きを向いているので、境内の中でも目立っていました。
※弁財天社と稲荷社
その弁財天社と稲荷社の後ろには、西院宮と住吉社、御神木の梛の木。西院の産土神でもある西院春日神社。西院宮には清和天皇が祀られています。
清和天皇と聞き、その孫である源経基が祀られている、清和源氏発祥の、あの神社を思い出しました。それほど遠くない場所に祀られ、両社とも京都十六社巡りの神社になっています。
※西院宮と住吉社 その奥に御神木の梛の木
弁財天社・稲荷社と還来(もどろき)神社の間には、仁孝天皇(にんこうてんのう)御胞衣塚があります。仁孝天皇は1800年生まれと比較的最近の天皇。御胞衣塚の周りには、白い丸い石がいっぱいありました。
「高貴な方の御胞衣塚(おえなつか)は、安産や子守のご利益があるとされ、当社では御塚に『子安石』を奉納する風習があります。
出典:西院春日神社 現地説明板
と書かれていました。この御胞衣塚に奉納する石、社務所で拝受することが出来ます。
西院春日神社の関係者の方のブログでも紹介されていました(現在は更新されていないようです)。
胞衣塚は過去にも見かけたことがありますが、ご利益がある胞衣塚というのは、初めてです。
胞衣塚の南側に、還来(もどろき)神社と梛石が向かい合わせで鎮座しています。梛石は撫石さんとも呼ばれる石。
旅行安全・還来成就の守り神「還来(もどろき)神社」
神石「梛石(なぎいし)」 何事も無事戻ってくる、また健康回復のご利益があります。
出典:西院春日神社公式サイト-春日神社 由緒・信仰
西院還来(もどろき)神社に祀られて居るのは、淳和天皇皇后正子内親王、藤原旅子、橘嘉智子こと還来大神様、初めてお会いした神様です。還来(もどろき)神社に奉納されて居るわらじも、社務所でいただくことが可能です。歩くしか方法がなかった時代、旅に出る時に無事に戻れるようにとわらじを奉納し祈り、無事に戻れたらお礼に詣ったことから始まったのだろうことは、想像に難くありません。
西院還来(もどろき)神社のすぐ横には、松が描かれた舞殿。ポスターが貼られて居る辺り、文化財指定はされていなさそうです。
舞殿の後ろにある、金刀比羅宮 大元宮 天満宮 猿田彦社の4社が一緒に祀られている相殿。こちらの向かって左から2番目の大元宮には、天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)様がいらっしゃいました。造化三神の神様に出会うと、おっ?と嬉しくなります。
※金刀比羅宮、大元宮、天満宮、猿田彦社の4社
そして、境外社の西院野々宮神社も。
色々見所があり過ぎて、多くの神様に出会ったなぁ…と思いながら、佐井西通り側へ。佐井西通り側には駐車場があります。
佐井西通りの鳥居の前にも、ちゃんと狛犬さん。こちらはしっかりお顔を拝見できる高さでした。
西院春日神社 御朱印
西院春日神社で頂ける御朱印は3種類。西院春日神社のものと、境内にある還来神社(もどろきじんじゃ)、境外社の野々宮神社のものです。
御朱印帳(御朱印込み)やお守りなどは公式サイトから購入申し込みをすることも出来ます。
御朱印の間紙が御神徳についてここまで詳しく書かれていたのは初めて見ました。また、藤原氏との関係が強い春日神社の社紋が由来であろう、下り藤の間紙も素敵。間紙とは別で由緒書きも頂けるので、希望される方は社務所で申し出てください。
※御朱印は変更される可能性があります。
西院はどちらかというと寺社が多くある場所ではありません。また、西院春日神社自体、小学校と幼稚園に挟まれた地元に根付いた神社であり、観光寺社ではありません。ですが、西院春日神社は、バスの乗り換えをする人も多い西大路四条の交差点から徒歩数分。バスの乗り換えの合間などに足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
藤花祭という祭事が行われるほど大きな房が垂れ下がる藤がある西院春日神社ですが、咲き始めの梅もなかなか可憐。
※社務所近くの梅。
京都に住み始めた頃、こちらの秋のお祭りに出会したことがありますが、多くの出店が出ていたのを覚えています。御朱印をいただいた時、「毎年10月第2土曜日・日曜日」ですからぜひお越しください、と、秋の春日祭のお話を伺いました。
googleの口コミにも返信されている程、丁寧な神社、社務所での対応も非常に丁寧でした。
西院春日神社 公式サイト
西院春日神社 毎年10月第2土曜、日曜に行われる「春日祭」土曜の夜に伺ってきました。
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