六道珍皇寺 概要
名称 | 六道珍皇寺 (ろくどうちんのうじ) |
山号 | 大椿山 (だいちんざん) |
通称 | 六道さん | 御本尊 | 薬師如来 |
開基 | 慶俊僧都(弘法大師の師) | 宗派 | 臨済宗建仁寺派 |
所在地 | 京都府京都市東山区大和大路通四条下ル4丁目小松町595 | ||
最寄りの公共交通機関 | 京阪電車 清水五条駅→徒歩約14分 京阪電車 祇園四条駅→徒歩約13分 阪急電車 瓦町駅→徒歩約15分 京都市営バス 清水道→徒歩約5分 |
・8月7日〜10日に行われる六道詣りには多くの市民が訪れる。
・小野篁が冥界に通ったと伝わる井戸がある。
・近くに有名な寺社が多い。
異界の入り口? 六道珍皇寺
毎年、夏のお盆の季節の前になると1度はテレビで見たり聞いたりしていた、六道珍皇寺。2017年の夏、NHKで放送された京都異界中継で詳しく見ることが出来ました。
六道珍皇寺では六道まいりやお精霊(しょうらい)さん迎えと呼ばれる、お盆に御先祖様を迎える行事が行われていて、その時期になると今でも多くの市民が参拝し、御先祖様を迎えているのです。テレビの中で紹介されていたお精霊さん迎えの方法は、盆提灯や迎え火と違い独特な方法でした。
ということで、安井金比羅宮にお詣りに行った帰り、夏から気になっていた六道珍皇寺へ。
六道珍皇寺は六波羅蜜寺や建仁寺、安井金比羅宮など、京都の中でも有名な寺社仏閣が密集している祇園にあります。安井金比羅宮の東大路通沿いの鳥居から六道珍皇寺の山門までは徒歩で5分程。
ちなみにこの松原通、かつては五条通だった通りで、今でもその地区の方々からは「昔はこの狭い松原通を祇園祭りの山鉾が通ってなぁ(以下略)」という話を聞くことがあります。
※上のgoogle地図は六道珍皇寺の山門を目的地に設定しました。
「六道の辻」「六道珍皇寺」の「六道」とは?
六道珍皇寺の名前にも入っている、この「六道」。仏教の教えの一つ。
六道(ろくどう、りくどう)とは、仏教において、衆生がその業の結果として輪廻転生する6種の世界(あるいは境涯)のこと。六趣、六界ともいう。
六道には下記の6つがある。
天道(てんどう、天上道、天界道とも)
人間道(にんげんどう)
修羅道(しゅらどう、阿修羅道とも)
畜生道(ちくしょうどう)
餓鬼道(がきどう)
地獄道(じごくどう)出典:wikipedia-六道–
この六道の分かれ道、六道の辻が六道珍皇寺の境内にあると言われています。平安京の頃まで遡ると、この辺りは墓所であった鳥辺野へ続く道だったと言われています。京都は千年の都ですが、その長い歴史の間ずっと今と同じ規模の都市だった訳ではなく、西へ東へと徐々に規模を拡大して来た為、当時の六道の辻があった近辺が現在ではこの様な街中になったと思われます。
ということで、そんな六道珍皇寺、今回は松原通り沿いの山門から境内に向かいます。
※京都市設置の駒札。松原通沿いにあります。
愛宕の寺も 打ち過ぎぬ 六道の辻とかや 実に恐ろしやこの道は 冥土に通ふなるものを
謡曲 熊野清水詣より
六道珍皇寺の境内
六道珍皇寺の境内は、狭すぎず広すぎず心地よい広さ。この日は夕方ということもあり、ほとんど貸切でお詣りさせて頂きました。
新しい建物と古い建物が混じっているなぁ…という印象を受けます。防災対策万全に見える薬師堂。六道珍皇寺の御本尊は薬師如来像なのですが、重要文化財に指定されている平安時代の薬師如来像は普段はこちらに安置されています。
水子祠堂の横には、堂本印象の名前が。六道珍皇寺では堂本印象が描いた「鷺図」が特別寺宝展の際に公開されます。
薬師堂の奥には閻魔堂(篁堂)(えんまどう(たかむらどう))こちらには弘法大師様、小野篁(おののたかむら)公、閻魔王様が祀られています。格子越しに覗く形でお詣りします。閻魔様はあの有名な閻魔様で間違い無いのですが、小野篁(おののたかむら)公を祀っている寺社はほとんど見かけないのですが、この六道珍皇寺において、小野篁公は外せない人物です。
閻魔堂(篁堂)(えんまどう(たかむらどう))の並びには、六道珍皇寺で夏に行われる六道まいりの際に迎え鐘を撞く、梵鐘が。この梵鐘には色々な伝説があります。
こちらの梵鐘、六道まいりの際には飛び出ている部分が紐で長く伸ばされていて、それを手前に引くことで鐘を撞くことが出来るのですが、建物の中の仕組みはわかりません。注意書きなどがなかったので、紐が出されていない時には音は鳴らないようになっているんだろうと思います。
「送り鐘」がある矢田寺↓
異界への入り口と呼ばれる理由は、鳥辺野だから、だけじゃない。
本堂の右横(東側)に、篁堂に祀られていた小野篁(おののたかむら)公にまつわる、もう一つの場所があります。「篁 冥土通いの井戸」と呼ばれる井戸です。
篁は昼間は朝廷で官吏を、夜間は冥府において閻魔大王のもとで裁判の補佐をしていたという伝説が『江談抄』、『今昔物語集』、『元亨釈書』といった平安時代末期から鎌倉時代にかけての書籍に紹介され、後世の『本朝列仙伝』(田中玄順・編、1867年・刊)など多くの書籍に引用されている。
出典:wikipedia-小野篁–
小野篁は小野妹子の子孫とも小野小町の祖父とも言われる人物。
而る間、大臣、身に重き病を受て、日来を経て死給けり。即ち閻魔王の使の為に搦められて、閻魔王宮に至て、罪を定めらるるに、閻魔王宮の臣共の居並たる中に、小野篁居たる。
今昔物語集 巻20第45話 小野篁依情助西三条大臣語 第四十五
出典:やたがらすなび
この地が六道の辻の中心であること、鳥辺山への入り口であったこと、更に小野篁が冥土に通った井戸があることなど、この世と異界への境にあるんだ、と思わせるような条件が揃ってます。
更に、近年境内の跡地から井戸が見つかり「黄泉がえりの井戸」と名付けられたそうです。
特別公開の際には近くまで行って見ることが出来るようですが、この日は特別公開ではなかったため、格子越しにのぞいて参りました。格子越しだと「冥土通いの井戸」しか見つけられませんでした。
ここまで何度も六道の辻、と書いて来ましたが、本堂前の三界萬霊供養塔の辺りが六道の辻の中心だと言われています。
三界(さんがい)
仏教における欲界・色界・無色界の三つの世界のことであり、衆生が生死を繰り返しながら輪廻する世界をその三つに分けたもの。
出典:wikipedia-三界–
十方(じっぽう)
十の方角のこと。東、西、南、北の四方と、東南、西南、西北、東北の四維(しゆい)、それに上、下の2方向をあわせた10方向をいう。すなわち、あらゆる方角のこと。仏教で十方三世(じっぽうさんぜ)とは過去、現在、未来にわたるあらゆる時間とあらゆる空間を意味する。
出典:コトバンク-十方 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説–
この三界萬霊供養塔は、ここから分技する六道・三界のみならず、全ての方向にある世界の萬の霊を供養するということになるのでしょうか?
今回は特別公開期間ではなかった為、通いの井戸は右手の赤と青のポスターの辺りから覗かせて頂きました。
土方と書かれている碑を見て、東福寺塔頭の同聚院を思い出しました。同聚院に祀られていたのは、土と方の字が引っ付いた十万不動明王様でした。
六道珍皇寺 御朱印
本堂が閉まっていた(と思われる)ので、本堂横のインターホンからお願いし、中に上げて頂いてご住職に御朱印を書いていただきました。「4時半までなんで、ちょうど良いタイミングでしたね」と。
その後、少しお話をさせて頂き「GWの連休には金字の御朱印がありますよ」とのお話をお伺いしました。六道珍皇寺では折に触れて寺宝の特別公開を行なっているだけではなく、多くの限定御朱印が用意されているようです。
帰り道、お話をさせて頂けて嬉しくて縁記をもらい忘れた!と思っていたところ、御朱印の間紙が略縁記になっていて一安心。
特別拝観と限定御朱印の詳しい日程や頂ける御朱印は、六道珍皇寺の公式サイトの拝観案内のページでも公表されています。
【追記】2018年GWの特別寺宝展に行って来ました。
2018年GW前半三連休の最終日、再び六道珍皇寺を訪れました。目的はもちろん、前回見られなかった、「黄泉がえりの井戸」と限定御朱印。特別寺宝展の最中とは言え、広すぎず狭すぎない境内は、人は多いものの混み合っているという印象はありませんでした。
薬師堂、閻魔堂(篁堂)(えんまどう(たかむらどう))の戸は開けられ、アクリル板で仕切られただけの状態。平安時代に作られた薬師如来像(重要文化財)や篁作の閻魔大王坐像を拝見しました(薬師如来像及び閻魔大王坐像、小野篁立像は撮影禁止でした)。
本堂の中へ入り、特別寺宝展の拝観料500円を渡すと「御朱印帳があればお預かりします。」と。御朱印を預けて番号札を受け取り、まずはお詣り。
本堂では、祀られている薬師如来三尊や十一面観音様毘沙門天様それぞれに、詳しい説明がなされていました。私が気になってしかたがない十一面観音様の暴悪大笑面についてもしっかり説明されていて、思わず読み入ってしまいました。毘沙門天像は空海の作だと言われているそう。開基が弘法大師 空海の師である慶俊と言われている上、もとは東寺が本山である真言宗だったお寺、空海開山説もあり、空海との繋がりの深いお寺であることは間違いなさそうです。
正面に座り説明を読み終えて上を見上げると、欄間(と言っていいかわかりませんが)の部分には左右に飛天が彫られていました。鴨居には所狭しと小さな仏像が。
その後隣のお部屋に寺宝が飾られていました。圧巻だったのは、熊野比丘尼という女性が布教に使ったとされる、「焔口餓鬼図(えんくがきず)」と「熊野観心十界図(くまのかんじんじっかいず)」。焔口餓鬼図の説明には、観音菩薩の化身と書かれていましたが…なかなかシュールで、救われている状態なのに苦しそうに見えてしまい、考え込んでしまいました。
熊野観心十界曼陀羅(くまのかんじんじつかいまんだら)」- 六道に「仏界」「菩薩界」「声聞界」「縁覚界」を合わせた十界を表した曼荼羅。
出典:wikipedia 六道珍皇寺
熊野観心十界図は上半分が人の人生を、下の半分で女性の地獄や亡者を救済する施餓鬼供養など、なかなか細かく描かれていました。人の人生の最初と最後、あの世と言われる部分の最初と最後、仏のいる極楽の中にも鳥居が描かれているのが非常に印象的。
順路に沿って縁側に出ると、すぐ右手に水琴窟がありました。「柄杓半分程で」と説明されていましたが、半分より少しだけ多めくらいがいいかな?という印象でした。
中庭を見ながら縁側を進むと、そこには極彩色の篁卿六道遊行屏風絵図が。なんとも艶やかですが、しっかり六道が描かれています。説明書きが置かれてて、多くの人が見入っていました。
用意されているゴムサンダルをお借りし、お庭へ。前回のお詣りでわからなかった、こちらのお社。竹林大明神様と書かれていました。御鎮主だなぁ…と思いましたが、お社の前には白狐様が鎮座されていたため、お稲荷様と関係があるのかもしれません。
冥土通いの井戸を覗き、その奥の黄泉がえりの井戸へ。黄泉がえりの井戸は新しく綺麗で、覗くと「輪廻転生」と書かれていました。再び縁側を歩き、裏から本堂に。
六道珍皇寺では、特別公開の際はあちこちで撮影禁止箇所が設けられています。残念ながらお庭は縁側からのみの撮影となっていたため、壁の向こうの黄泉がえりの井戸は撮影出来ませんでした。
春の特別寺宝展でいただける、限定御朱印
用意されていたのは通常の医王殿の御朱印と御本尊の薬師如来様の御朱印、そして「若草紙金泥御朱印6種セット 3000円」と、「紺紙金泥」の薬師如来様・閻魔大王様・小野篁公の3種類、各500円。
医王殿の御朱印と薬師如来様の御朱印は御朱印帳に直接書いていただけますが、和紙を使った御朱印は書き置きのものになります。
今回は悩みに悩んで御本尊の薬師如来様を書いていただき、閻魔大王様の和紙の御朱印を頂いて参りました。
限定御朱印がもらえる期間は、六道珍皇寺公式サイトの拝観案内に記されています。↓
何かの折に壊れてしまうのでは?と少し心配になるほど、歴史を感じる毘沙門天像。
頂いて来た由緒書きには、薬師如来三尊に関しては(京仏師 中西祥雲作)とだけ書かれていましたが、十一面観音像、毘沙門天像のことは何も書かれておらず、少し残念に思いました。ですが、由緒書きには「精霊迎え「六道まいり」」や「迎え鐘」「冥土通いの井戸・黄泉がえりの井戸」の話がしっかり書かれていました。
※由緒書き・橙・黄色どちらも100円(記載されている内容は同じでした)/白い方は特別拝観でいただけるものでした。
年を追う毎に、会いたい人が居る世界と私の居る世界が違うということが増えて来ています。あの世や六道の世界があるかどうかはさて置き。呼ぶことが出来るのならば、夏に六道まいりをしよう、と思う昨今です。
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