・真言宗の最高儀式が行われる場。
・龍神が描くとも言われる、閼伽井の絵馬。
東寺 概要
名称 | 東寺(とうじ) (通称:教王護国寺) | 山号 | 八幡山 |
正式名称 | 金光明四天王 教王護国寺 秘密伝法院 (こんこうみょうしてんのう きょうおうごこくじ ひみつでんぽういん) 正式名別称:弥勒八幡山総持普賢院 | ||
御本尊 | 薬師如来像 | 脇侍/安置仏 | 日光菩薩/月光菩薩 その他敷地内に多数 |
開基 | 桓武天皇 | 宗派 | 東寺真言宗 |
札所 | 洛陽三十三所観音霊場第23番 真言宗十八本山第9番 西国愛染十七霊場第8番 京都十三仏霊場第12番 京都十二薬師霊場第2番 都七福神(毘沙門天) 神仏霊場巡拝の道第84番(京都第4番) | ||
所在地 | 京都府京都市南区九条町1 | ||
最寄りの公共交通機関 | 近鉄東寺駅から徒歩約8〜15分 京都市営バス 東寺東門・東寺南門・九条大宮・東寺西門前 | ||
拝観時間等 | 05:00〜16:30、17:00、18:00 (季節によって変わります。夜間拝観も、一度閉門退出後、再入場になります) | 拝観料(通常) | 拝観料:庭園内(金堂講堂含む)500円 ※拝観内容により変動あり・無料で見られる場所もあり |
東寺 灌頂院の門は、年に2日だけ開かれる
東寺の南西、八幡宮社や国宝の蓮華門近くにある、灌頂院(かんじょういん)。
こちらの灌頂院には北門と東門があるのですが、通常はどちらも閉じられている上、定規筋の入った壁で囲まれているために、屋根しか見ることができません。私たちが直接灌頂院を見ることができるチャンスは年に2回。1月8日から七日間行われる後七日御修法(ごしちにちみしほ)の結願日にあたる1月14日の12時半からの1時間と、4月21日の灌頂院閼伽井の公開の時の10時〜15時。つまり、1年間に6時間しかチャンスはありません。
しかも両日ともじっくり見られる訳ではなく、暗がりだったり一部を拝観できるだけだったり。
後はいつ行われるかわからない、特別公開の機会にしか拝観することが出来ません。
密教においては、頭頂に水を灌いで諸仏や曼荼羅と縁を結び、正しくは種々の戒律や資格を授けて正統な継承者とするための儀式のことをいう。
出典:wikipedia-灌頂(かんじょう)
そもそもこの灌頂院は、密教を継承する重要な儀式である伝法灌頂を行うために建てられた建物です。重要な儀式を行う建物故、公開される機会が少ないのでしょう。
後七日御修法 後拝み 2018年1月14日
東寺灌頂院の後七日御修法は、毎年1月8日から七日間かけて行われ、1月14日に最終日を迎えます。
宮中真言院で弘法大師空海によってはじめられた正月行事です。真言宗の最高の儀式で、真言宗各派が一堂に集まり、鎮護国家、五穀豊穰、国土豊穰を祈ります。秘法のため灌頂院道場への入堂はできませんが、上堂と退堂の列をご参拝いただけます。
出典:東寺公式サイト-法要のご案内
2018年1月14日12時20分頃の東寺。既に退堂の列も終わり、後は12時半からの一般拝観希望者への開門を待つだけ。多くの拝観希望者が列を成していましたが、2018年は比較的少ない人出だったそう。
事の起こりが宮中ということだけあり、この日は小子房の勅使門も開けられていました。特別拝観でも開けられることはなかった、この勅使門。開いているということは、宮中から勅使の方がいらっしゃっている証拠。あちこちで勅使門を見て来ましたが、門扉が開いているのを見たのは、今回が初でした。
この後、燕尾服とロングドレスに身を包んだ方が、この門を潜り出られました。
そして、真言宗の高野山〜と書かれ頭陀(ズダ)袋(もしかしたら、看板袋かもしれません)を下げた修行僧の方々や真言宗関係者が退堂し、13時頃いよいよ一般参拝客の拝観が始まりました。
※皆、上堂と退堂の列の後を踏まないように歩いている様が印象的。
灌頂院 拝観の様子。
灌頂院東門を潜り、拝観料として1000円を渡し、観修寺流後七日御修法の案内とお札を受け取ります。このお札、何枚も拝受される方もいらっしゃいました(料金を支払えば頂けるようです)。
※守護札の公開は控えさせていただきます。
堂内は撮影出来るような雰囲気ではありませんので、写真はありません。(多分撮影禁止です)。入り口と出口を兼ねている為、時々入場が止められていましたが特別拝観より年齢層が高く、粛々と進んで行く様が印象的でした。入り口では若い僧達が袋を渡しながら「靴を脱いでお上がりください」「足元暗くなっております、段差がございますので、お気をつけてお進みください」「立ち止まることなくお進みください」と声をかけ続けていました。
来慣れた方なのでしょう、携帯用のスリッパや紙製のスリッパを用意されていた方も見受けられました。
堂内は建物中央辺りに石畳が敷かれ、南側は一段高くなっており北側は壁で仕切られていました。イメージとしては、建物真ん中に石畳の廊下があり、南北に一間ずつ、という感じです。南側は戸が開けられているために所々に柱があるだけで、外が丸見えでした。雨戸を外した、といった感じでしょうか?本来ならば壁や戸がある部分は菊の紋が入った幕で区切られ、部屋の中央にはパイプ椅子が向き合って並べられてていました。その南側へは入る事なく北側の壁で区切られた部屋に入ります(ちょっと説明が難しいです…)。
儀式が行われていたのは、北側。
北側はろうそくとスポットライトが1つだけ。薄明かりの中を進みます。まず目に入るのが、壁に書かれた僧侶の絵。見ることが出来る明るさではないのですが、僧侶が2人と飛天のような女性のような絵が1箇所描かれて居るのを確認することができました。
最初に息災護摩壇と書かれた護摩壇。そして、「金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)」と増益護摩壇、スポットライトに照らされたお香(焼香に使うような細かなもの(塗香ほどの細かさはなかったです。))、香水壇、「胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)」その前に片壇と書かれていたような…記憶が曖昧なところがあります。そして聖護摩壇、五大尊(五大明王)のお軸と前に供えられた五大尊壇、聖天壇、厨子と二間観音壇(出口側)、十二天のお軸と前に供えられた十二天壇、外に出て神供壇を見て廻りました。
印象的だったのは、五大尊が青(藍色?)で描かれていたこと。そして、大威徳明王が乗った牛の迫力。思わず「青不動…」と呟いてしまったほど、日本古来の青、そしてその青に負けない迫力でした。(※国宝の「青不動尊」は天台宗 青蓮院門跡です。)
靴を入れる袋をお返しして外に出て、北門から退場するために閼伽井の方へ。
閼伽井の上には絵馬がかけられた状態でした。昨年の閼伽井の公開からずっとかけっ放しなのかどうか?はわかりませんでした。
後七日御修法に参加されるのは、真言宗各宗派から選ばれたわずかな高僧。高僧ですから結構年配の方もいらっしゃいます。また、灌頂院内で誘導をしていたのは、薄着の若い明らかにお手伝いの僧侶の皆様。寒い季節に寒い場所で七日間も鎮護国家、五穀豊穰、国土豊穰を祈り、更に慣れないであろうに一般の方々を誘導するというのは、本当に大変でしょう、ありがたいことです。
灌頂院拝観後、改めて灌頂院東門に廻ったところ、既に門扉は硬く閉ざされておりました。この時、午後1:36。
灌頂院の東門の扉が開いていたのは、本当にわずかな時間。門の中や外では多くのお坊さん達が写真撮影をしていました。関係者でも記念撮影をする、それほど、この建物を目にする機会は少ないのです。
平成最後、2019年の後七日御修法 初日。
2019年1月8日。新年のご挨拶に出向いた東寺さんは、後七日御修法の初日でした。
残念ながら入堂・退堂共に間に合いませんでしたが、勅使門が開いておりました。最終日以外は後拝みがないからでしょうか?境内も閑散としていて、いつもの平日の平和な東寺さん、と言った雰囲気。
そこに置かれていた後七日御修法の説明を頂き読んでいた所、勅使門から使者の方々が出て来られ、車に乗り込んで行かれました。
勅使門はやはりすぐに閉められてしまいましたが、閉める瞬間を見せていただけました。これはこれでとても貴重な瞬間でした。
後七日御修法期間中、縄で立ち入り禁止ゾーンが囲われているのですが、時々下の写真のように蝶々結びで結ばれている所があります。関係者の方などがこの蝶々結びを解いて出入りしているのを見かけました。
令和初、2020年の後七日御修法最終日の後拝みへ
令和初となる、2020年の後七日御修法最終日の後拝みへ出向いて参りました。2年ぶりの後拝み、到着したのは11:30少し前。退堂の列待ちの状態でした。小子坊の入口にはずっと係の方が立たれていましたが、隙を見て撮影。まだ門松が建てられています。2020年は2018年よりも和袈裟を掛けたお寺さん主催のツアー(?)で来られたであろう方々が非常に多かったです。それに伴い、年齢層も高かった印象です。
もちろん、勅使門も開けられた状態。この日もこの後燕尾服とロングドレスに身を包んだ方が出て来られ(たように、遠目からは見え)ました。
退堂の列が終わり、若い学生さんが北側の門から入って暫くたった頃、一般の入場が開始となりました。列が動き出した後で撮影した写真が12:53。恐らく12:45〜50分頃に入場が開始されたかと思われます。
2018年には大雑把ながらも入場が調整されていたのですが、今回は区切られることなく、延々と入場して延々と出てくる人。入場を区切られなかったこと以外は、前回と一緒。学生さんからビニール袋を受け取り、靴を持ったまま入場です。
灌頂院の中も前回とほぼ一緒…かと思いきや、今回は周囲を覆っていた暗幕がかなり開けられており、比較的明るい中での拝見となりました。そして、前回よりも人が多く、立ち止まらないようにという呼び掛けもあった為に、ゆっくり拝見することは出来ませんでした。
大きく開けられていたからでしょうか?前回ほど濃密なお香の匂いは感じられませんでした。
新しい筋塀と古い筋塀。内側から見るとわかりやすいですね。
閼伽井周辺ではどこかのお寺さん主催のツアーの方々がお坊さんから閼伽井の説明を聞いていらっしゃり、さらに遠巻きに一般の参拝者の方々が聞いている…という、お寺にありがちな状態。さっと絵馬の写真だけ撮らせて頂きました。
今回、この絵馬の写真はどうしても撮りたかったのです。
というのも、去年の4月の絵馬と比較したかったから。
上が2020年1月。下が2019年4月。どうやら4月に掛けられた絵馬がそのまま掛けられている(かどうかはわかりませんが)ようです。
後拝みはその雰囲気が残っているのが一番の見所だったのですが、今回は匂いも薄れ、明るさも増した状態…見事なほどにスピーディーな片付けと言えます。また、安全性を考慮しようとすると、明るさが増した状態の方が良いのでしょう。
2023年 後七日御修法。
新型コロナウイルスの影響を受け2021、2022年と後拝みがなかった東寺さんの後七日御修法。私としては2021年以来の後七日御修法となりました。2023年は後七日御修法の後拝みがあるかどうか不明だったのですが、上堂と退堂の列は見せていただくことができました。
皇室関係者を迎えているため、開かれた小子房の門。
2023年は皇室からの使者の方は男性のみだったようです。
あいにくのお天気でも、上堂と退堂の際は毎年同じように線を引かれた砂利の上を進まれます。杖をついて歩かれるような高僧も同じように歩かれていたのが印象的。
後七日御修法は秘伝とされていますが、2019年にNHKで映像化されたことがあり、その後何度か再放送されています。今はNHKオンデマンドで視聴することができます。
結局2023年も後拝みが一般公開されることはなく、お守りをいただいて終了となりました。
4月21日は、東寺にとって特別な日。
東寺にとって、4月21日は特別な日です。
承和2年、835年3月21日、高野山奥の院に弘法大師空海はご入定になりました。新暦の4月21日にあたります。毎月21日には報恩感謝の法要を行います。大日堂にお上がりいただけます。
出典:東寺公式サイト-法要のご案内
弘法大師入定の21日に合わせて東寺では毎月境内全域で弘法市が行われているのですが、4月の弘法市は一味違うのです。
東寺 灌頂院 閼伽井の絵馬公開 2016年4月21日
灌頂院閼伽井(かんじょういんあかい)公開
年に一度、灌頂院の北門を開き、閼伽井に掛けた絵馬を公開します。向かって左が一昨年、右が去年、中央が本年となります。馬の体躯により経済の成長や豊作を占います。
出典:東寺公式サイト-法要のご案内
私が訪れた2016年4月21日は、雨の弘法市でした。灌頂院の北門と小子坊の間は弘法市の出店者の車が所狭しと止められていて、ロープで仕切られた中を歩いて灌頂院 東門へ向かいました。
灌頂院の北門の正面に、弘法大師様のお軸がかけられ、りんごと大根が備えられていました。春なのにりんごと大根…?と思いながら、まずは弘法大師様にご挨拶。入定の日ですが、灌頂院では至ってシンプルに祀られていたのが印象的です。
そして、門を入ってすぐ西(右手)の所には、閼伽井(あかい)が。
閼伽(あか)は、仏教において仏前などに供養される水のことで六種供養のひとつ。
出典:wikipedia-閼伽(あか)
閼伽井をしっかりと残しているお寺というのは、どれくらいあるのでしょう? あまり見かけることはありませんが、京都市左京区にある峰定寺では閼伽井も重要文化財に指定されていました。
井戸そのものを閼伽井と呼ぶのが本来で、その上の建物は閼伽井屋というのですが、今では建物も含めて閼伽井と呼ばれている気がします。
東寺ではこの閼伽井の上の朱色の絵馬の出来栄えで農作業の豊凶を占っていたそうで、中央の絵馬が今年の分、右の絵馬を昨年分、左の絵馬を一昨年分として、絵馬の顔の長さや胴の太さを見比べて、その年の豊凶を判断するのだそうです。
実際に絵馬を見て説明を読んでも、私には豊凶の判断は難しい所です。昔は長老と呼ばれるような人が、過去の絵馬との関連や経験などから豊凶を判断したのだろう、と思いを馳せた閼伽井でした。
最近では2016年の秋に特別公開されていた、灌頂院。建物自体は江戸時代に再建されたものです(門は鎌倉時代です)。仏像などは安置されていませんが、宗教上重要な儀式を行う大切にされてきた場所です。
2019年4月21日 灌頂院の閼伽井公開再訪+α
2019年4月21日。ちょうど日曜日に当たったこの日、3年ぶりに灌頂院の閼伽井の絵馬を拝見しに行って参りました。相変わらず弘法市に店を出す方々の車が所狭しと止められたその奥、灌頂院の北門へ向かいました。灌頂院北門周辺は数家族が座り込んでいた為、撮影は割愛。
北門を入ってすぐの所にテントが貼られ、絵馬にちなんだお守りなどが売られていました。灌頂院の北の外壁沿いに掛けられた弘法大師空海の掛け軸。前回同様りんごと大根が備えられていました。
弘法大師様にお詣りした後は、テントの正面辺りにある閼伽井へ。真ん中が今年の絵馬と言われているのですが、2016年に比べると去年も今年も来年も丸めな馬が描かれていました。この絵馬による豊凶は相変わらずわかりませんが、前よりも肥沃であるといいなぁ…と思わせる、馬の太さでした。
元号が変わるタイミングに合わせた灌頂院の特別公開
2019年は元号が平成から令和に変わるという歴史的に大きなタイミングの1年となる訳ですが、改元に合わせてなのか東寺の仏像の多くが東京に出張している為なのか…真意を測りかねますが、灌頂院の特別公開が行われていました。
来春の夜桜ライトアップシーズンは南方の守護が手薄…。 pic.twitter.com/HyeagNGsxI
— 寺女【京都(Kyoto)】 (@Love_kyoto_life) 2018年12月14日
今回の特別公開は、灌頂院の空間を利用したAR体験。入り口でQRコードを読み込み、自分のスマホ(タブレット)でARを体験しながら拝観するという、東寺としては見たことがない拝観方法でした。
ちなみに、灌頂院内は撮影可でした。
思うに、ARということでスマホやタブレット不可避だからじゃないかなぁ、と。— 寺女【京都(Kyoto)】 (@Love_kyoto_life) 2019年4月21日
後七日御修法の際、金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅が掛けられていた場所にプロジェクターから曼荼羅図や講堂に祀られる仏像などが映し出されていました。
で。
知らなかったのですが、灌頂院、特別公開されていました。後七日御修法の後拝みのイメージしかなかったのですが、ARだそうで…。
通常時にあの空間を求める方が間違いだよねぇ、と。
しつらいや匂い、やっぱりその辺りの影響は大きいですね。 pic.twitter.com/62UzjxjDIp
— 寺女【京都(Kyoto)】 (@Love_kyoto_life) 2019年4月21日
貴重な場所なので特別公開されることは嬉しいのですが、やはり後七日御修法の荘厳さを感じることはできませんでした。
東寺の中でも拝観するタイミングが少ない場所なので、開いている時はご縁と思って、ぜひ拝観してみてください。オススメはやっぱり説明が聞ける特別拝観です。
東寺 御朱印 不動明王
東寺の中で、参拝出来る不動明王様は6体。立体曼荼羅、御影堂の秘仏、御影堂横、三面大黒天様の横、太元堂の前、北総門の横かと思います(宝物館は除く)。一番有名なのは、立体曼荼羅の不動明王様でしょうか? お好きなお不動様を探して、ぜひお詣りください。
※日付が違うのは、ご愛嬌。
東寺はまだまだ、魅力がいっぱい!
コメント
「そして、真言宗の高野山〜と書かれたずた袋(もしかしたら、看板袋かもしれません)を下げた修行僧の方々や真言宗関係者が退堂し、13時頃いよいよ一般参拝客の拝観が始まりました。」
ずた袋ではなく頭陀(ズダ)袋です。
ありがとうございます。
修正いたします。