・重要文化財の仏殿、シンプルな内部と雲龍図
・静寂と清浄、鎮守杜
御寺 泉涌寺 概要
名称 | 泉涌寺(せんにゅうじ) | 山号 | 東山(とうざん) 泉山(せんざん) |
御本尊 | 釈迦如来 阿弥陀如来 弥勒如来 |
安置仏 | 阿弥陀如来坐像(海会堂) |
開基 | 弘法大師(泉涌寺公式サイトより) ※諸説有り |
宗派 | 真言宗泉涌寺派 |
札所 | 真言宗十八本山 第8番 洛陽三十三所観音霊場 第20番 京都十三仏霊場 第6番 泉山七福神巡り 番外 |
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所在地 | 京都府京都市東山区泉涌寺山内町27 | ||
最寄りの公共交通機関 | 東福寺駅(JR奈良線/京阪電鉄)→徒歩10〜15分 京都市営バス泉涌寺道バス停下車→徒歩7〜10分 |
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拝観時間等 | 9:00~17:00 9:00〜16:30(12月1日〜2月末) |
拝観料(通常) | 伽藍拝観:大人500円 中学生以下300円 特別拝観:大人300円 |
多くの皇族が眠る、皇室の菩提寺
東山三十六峯の一つ、月輪山の山麓に泉涌寺(せんにゅうじ)があります。泉涌寺は皇族ゆかりのお寺ということで、御寺(みてら)泉涌寺と呼ばれています。
※御寺 泉涌寺 大門
泉涌寺の総門から塔頭の並ぶ坂を登り、登りきった所に泉涌寺の大門があります。
江戸時代初頭の御所の門を移築したこの大門は、重要文化財に指定されています。大門を潜った所で伽藍拝観料(大人500円/中学生以下 300円)を支払い、拝観開始です。
楊貴妃観音堂 美人祈願+良縁祈願
大門を潜り左を見ると、宝物館の心照殿と楊貴妃観音堂があります。
楊貴妃観音堂の堂内には、楊貴妃観音をX線で調べた所胎内に五輪塔が内包されていて、更にその五輪塔の中には仏舎利と思われるものが3粒写っていた、という説明がX線写真と共に書かれていました。
堂内はそれほど明るくないのですが、楊貴妃観音様のお姿はしっかりわかる程度の明るさはあります。楊貴妃をモデルに香木を使い寄木造りで作ったと言われる楊貴妃観音様。その憂いのある表情はとても魅力的です。
楊貴妃観音様には縁結びや美人祈願にご利益があり、結婚した人も多いとか。

楊貴妃観音堂の駒札
毎年成人の日に行われる泉山七福神では、塔頭の七福神+楊貴妃観音様(+新善光寺の愛染明王様)にお詣りするのが慣例となっていて、七福神の祀られていない泉涌寺にも多くの人が立ち寄ります。
仏殿へ
仏殿を見下ろしながら綺麗に整備された砂利道を歩いて行きます。見下ろすお寺というのは、私は泉涌寺以外は記憶にありません。そして、他のお寺に比べて非常に黒いという印象を受けます。
参道を下りきる頃、参道右側に浴室が建っています。立札の説明には古式の蒸し風呂と書かれていますが、内部は拝観出来ません。優美な造りと書かれているだけに、余計に気になります。そして、泉涌寺の名前の由来となった名水泉涌水が今も湧き出る水屋形があります。
泉涌寺仏殿です。参拝中の方と比べるとその建物の大きさがわかると思いますが、大きな仏殿です。仏殿も重要文化財です。

泉涌寺 仏殿
仏殿の中は広い土間になっていて、釈迦如来、阿弥陀如来、弥勒如来の三体の御本尊が横並びに祀られています。脇侍ではなく御本尊が三体並んでいる姿は珍しいな、と思っていたら、公式サイトに説明がありました。
仏殿内陣には運慶作と伝える阿弥陀・釈迦・弥勒の三尊仏が安置され、過去・現在・未来の三世にわたって人類の平安と幸福を祈る人々の信仰を集めている。
このような形式の安置方法は日本には少なく、俊芿律師が留学した南宋仏教の影響で、宋代仏教の伝来を担う泉涌寺にふさわしい本尊である。出典:御寺泉涌寺 公式サイト-仏殿
仏殿の天井には、狩野探幽が描いた龍の図があります。雲龍図と呼ばれるお寺の本堂の天井に描かれた龍。京都で見かける多くの雲龍頭は丸の中に描かれていますが、泉涌寺の雲龍頭は長方形の中に描かれています。仏殿内はルートが設定されているためそのまま裏に出るのですが、三尊仏が祀られている背後の壁の裏の白衣観音図も狩野探幽が描いたもの。
仏殿の後ろには、舎利殿が建っています。この舎利殿には、お釈迦様の歯の部分が祀られていて、普段は非公開ですが、辰年に特別公開が行われているそうです。仏殿の濃茶と舎利殿の白壁は対照的です。
霊明殿から月輪陵へ。
舎利殿から左に向かうと、霊明殿があります。
霊明殿では歴代天皇の位牌が祀られていて、今でも毎日御回向が行われています。
霊明殿の唐門の壁の五本線、しっかりと意味があります。
泉涌寺は皇族方が眠るお寺なので、当然五本線です。
唐門から覗いた霊明殿。きらびやかではないですが、豪華な造りであることは一目瞭然です。きらびやかさがない分、周囲の景色やかけられた御簾などから、時代をさかのぼったかの様な印象を受けます。また、泉涌寺ではあちこちに菊の紋を見かけます。霊明殿の唐門にも、豪華な彫物の中に大きく菊が彫られていました。この他、屋根の上や屋根瓦など、あちこちに菊の御紋を見つけることが出来ます。
霊明殿の後ろには、月輪陵(つきのわのみさぎ)があります。ここにはこんなに多くの皇族方が祀られています。
本坊、御座所と御座所庭園
霊明殿と並んで、本坊と御座所があります。泉涌寺の御朱印は本坊の入り口で拝受します。
御座所は特別拝観となり、本坊入り口で拝観料を支払います。室内は撮影禁止です。実際に皇族の方が利用している写真と共に、室内の説明がされています。海会堂や霊明殿も繋がっているそうで、海会堂の入り口を見ることが出来ます。海会堂の入り口の土蔵の扉が見られるのですが、非常に分厚く、如何に大切なものが祀られているのか?ということが見て取れます。
御座所庭園は広い庭ではありませんが、手入れの行き届いた庭や車寄せ、秋には紅葉が見事です。近くの東福寺の紅葉程人が押し寄せないので、紅葉の穴場と言えるかもしれません。
ひっそり佇む鎮守社
一度目に伺った時には気がつかなかった階段を登ると、そこには鎮守杜が。本当にひっそりと静かに、という言葉が相応しい空間でした。
以前の公式サイトでは紹介されていませんでしたが、2017年にリニューアルされた公式サイトによると、ここには稲荷大明神が祀られているそうです。
これだけのお寺をずっと守り続けて来た鎮守杜。そのお力は計り知れないものがあります。
2018年、少し早い紅葉の様子
泉涌寺塔頭の新善光寺展を訪れた時に行われていた、泉山七福スタンプラリー。スタンプを集めて泉涌寺へも立ち寄りました。


まずは、大門を入ってすぐ左手にある、楊貴妃観音様へ。この日、泉涌寺の中で一番混雑していたのが、美人+良縁祈願のご利益があると言われるこの楊貴妃観音様。多くの女性が熱心にお詣りしていました。
楊貴妃観音堂の手前には、手水鉢と願掛け地蔵様。こちらのお地蔵様もご利益がありそうです。

楊貴妃観音前手水鉢 20181119
綺麗に整えられた参道、奥の御座所庭園の紅葉が遠目でもよくわかるほど色づいていました。

泉涌寺 仏殿 20181119

泉涌寺 仏殿 20181119
御座所庭園の紅葉に合わせてなのか、もみじ祭に合わせてかはわかりませんが、境内には菊の展示と茶店が。テントはともかく、毛氈が本当によく似合う景色です。

泉涌寺 本坊・御座所入り口 20181119
2019年11月、再々訪。
塔頭寺院の護摩供のあとに訪れた、泉涌寺。相変わらず静か…かと思いきや、泉涌寺と関わりのある新宗教のイベント前日ということで、いつもと少し雰囲気が違いました。
2019年は紅葉が非常に遅く、一番色付いている木でもこの程度。
本坊入り口辺りから御座所を見ても色付きは見受けられません。が、美しい屋根に思わず立ち止まりました。
御寺 泉涌寺 御朱印
泉涌寺の御朱印は本坊入り口で頂くことが出来ます。泉涌寺塔頭寺院の善能寺の御朱印や楊貴妃観音堂の御朱印も、泉涌寺の本坊入り口で頂くことが出来ます。
2019年11月、洛陽三十三所観音霊場の御朱印を頂きました。大門横の楊貴妃観音様の御朱印。拝観料を支払った際に頂いたパンフレットは、表面だけでなく中身も少し変更されていました。
※御朱印は変更される可能性があります。
泉涌寺は塔頭も含めて拝観に半日くらい時間が必要です。月輪山の麓から塔頭寺院をお詣りしながら泉涌寺を目指すのも一興です。成人の日に行われる泉山七福めぐりや春分/秋分の日、勤労感謝の日辺りには、各寺院で特別公開や法要が行われています。





泉涌寺の近くには宮内庁の事務所もあり、皇室との関わりの深さを感じずに居られません。天皇陵には、御朱印のような陵印と呼ばれるものがあります。泉涌寺近くの月輪稜墓監区事務所でも陵印が頂けます。御朱印巡りと合わせて、陵印巡りもいかがでしょうか?
隣の山は混んでそうだったから、大根食べてお蕎麦食べて来た。 pic.twitter.com/3oSfXxkrHa
— 寺女【京都】@冬眠したい (@Love_kyoto_life) November 25, 2023
2023年11月25日再訪
この時期は紅葉が見事なのでつい訪れるのですが、連なる東福寺と比べたら人も少なく、ゆったりと過ごせます。それでもいつもより多い人であることに変わりはないのですが。今回は洛陽三十三観音巡礼の2周目の御朱印をいただきながら紅葉を眺めに伺いました。
泉涌寺も最近限定で切り絵御朱印などを用意されているのですが、今回は御朱印帳をいただきました。何種類かある中で私が選んだのは、この菊の紋が入った御朱印帳。これぞ泉涌寺ではないでしょうか?

表表紙の裏側には、印刷がされていました。

2024年11月 辰年の舎利殿特別公開
毎秋に伺っている泉涌寺。2024年は舎利殿の公開に合わせて参拝してまいりました。2024年は驚くほどに紅葉が遅かった京都。舎利殿では狩野山雪筆の天井画の説明を伺った後、鳴き龍を体験させていただきました。手を叩くと音が反響することを鳴き龍と呼んでいる訳ですが、反響させるためにはここに立って叩くと良い、など教えていただかなければわからないなぁ…と。また、舎利殿はしっかり反響するように天井が湾曲しているとのこと。それでもうまく手を叩けなかった私は他の方が響かせている音を体験させていただいて終了です。
舎利殿を拝観して鳴き龍を体験し、限定御朱印をいただいて、この日の参拝は終了です。舎利殿特別公開の限定御朱印は金泥と銀泥で鳴き龍と書かれた御朱印が用意されていましたが、私は銀色のものを拝受。
次はまた12年後でしょうか?次こそはちゃんと手を叩けるといいなぁと思う、舎利殿でした。
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